2017年7月15日土曜日

【書評】憂国【三島由紀夫】

【憂国】1961年発行
【作者:三島由紀夫】

名前は聞いたことあるって人も多いであろう三島由紀夫の代表作。二・二六事件を題材とし、叛乱軍となった仲間らを討伐しなければならなくなったことに懊悩した主人公が妻と共に心中する物語。短編ではあるがそれを全く感じさせない濃密な情景描写、感情表現の数々は正しく三島由紀夫作品と呼ぶに相応しいのであります。


あらすじ

昭和11年2月28日、二・二六事件で決起をした親友たちを叛乱軍として勅命によって討たざるをえない状況に立たされた近衛歩兵一聯隊勤務の武山信二中尉。彼は懊悩の末、自することを新婚の妻・麗子に伝える。すでに、どんなことになろうと夫の跡を追う覚悟ができていた麗子はたじろがず、共に死ぬことを決意する。そして死までの短い間、夫と共に濃密な最期の営みの時を過ごす。そして、2人で身支度を整え遺書を書いた後、夫の切腹自殺を見届け、自らも咽喉を切り、自決する。


いや暗いっすね!だって自殺する話ですから。こういう言い方をするとあまり読みたいとは思わないかもしれませんが、僕はこの本を何度も何度も読み返してしまいます。正真正銘、純粋潔白な文学と呼べるからです。主人公の苦悩を、妻との最後の営みを、腹を裂き迸る血液を、嘗て無いほど鮮明に表現しています。

というかぶっちゃけ、あまりにもこの作品は"完成された世界"なので、なんというかもうここであれこれ語ることすら烏滸がましいと思ってしまいます。

強いて言うならば、この作品こそ三島由紀夫の死生観、芸術観を解き明かす鍵であると思います。思想に忠を尽くし死に殉ずる人間の至上の美徳ってやつをこの作品から感じ取れればいいんじゃねぇかなぁ、うん。僕からは以上。

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