2017年3月5日日曜日

【書評】神曲【ダンテ・アリギエーリ】


【神曲】1320年ぐらい発行
【作者:ダンテ・アリギエーリ】

ダンテ!?DMC(デビルメイクライ)か!?と思ったあなた。その通りでございます。
本書の主人公で作者でもあるダンテとその案内人であるウェルギリウス。DMCの主人公がダンテ、その兄がバージル(ウェルギリウスの英語読み)。他にも色々共通点あるよ(投げやり)。バイオハザードリベレーションでは本書の地獄の門に刻まれた文言"この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ"を連呼するヴェルトロ(神曲地獄篇にちょこっと登場)という集団が登場してたり。芥川龍之介の「歯車」(書評に飛びます)にもちょいちょい登場。


そんなわけで割といろんなところに影響を与えている名著「神曲」のレビューと紹介をバキっと始めていきますよ。



作品紹介

原題は「喜劇Commedia」、イタリア語では「神聖喜劇(La Divina Commedia)」そして日本では「神曲」となりました。かみきょくではなくしんきょくです。よく間違えます。地獄篇、連獄篇、天国篇の3部から成る長篇叙情詩で、地獄かっつーぐれぇ長いです。でも色んな文学作品に登場する作品なので読んでおいて損はないですよ!たぶん


さて、この本を一言で表すなら「作者のさじ加減で実在の人物が地獄に堕とされたり天国にいたりするのでそれを観光するお話」です。これは怒られそうな表現ですが僕はそう感じました……このクソ感性!と言うのも、もともとダンテは政争に敗れてフィレンツェを追放されているんです。なので神曲には、ここかしこにダンテが経験した政治的不義に対する憤りが現れており、自分を追放したフィレンツェ、ダンテを陥れた人物は地獄界に堕とし、そこで罰せられ苦しむ様子描いてます。嫌いな奴をボコボコにする妄想をするようなアレです。ほかにも、ダンテは自由に有名無名の実在した人物を登場させ、地獄や煉獄、天国に配置してます。大好きなかわいこちゃんはもちろん天国だ!こんなんでいいのかよ!?


ようやくあらすじに入ります。.zipかっつーぐれぇ圧縮したまとめをどうぞ。

あらすじ

地獄篇

ダンテは暗い森に迷い込み、共和制ローマの詩人ウェルギリウスに案内され地獄へ訪れます。地獄へ迷い込んだダンテを案じたベアトリーチェ(ダンテの初恋の人で若くして亡くなる)が天国から辺獄(地獄の一丁目的なところで洗礼を受けなかったものがここにいる)にいるウェルギリウスへ先導を命じたわけで。地獄は地下へ続いており、下れば下るほど重罪を犯したものが投獄されています(罪の大きさはだいたいキリスト教的観点に基づく)。ダンテの気に食わない実在の人物がもうめちゃくちゃに苦しめられてる様に割と引きながらもデモニックサファリパークを楽しんだ二人は地球の裏側へ到達し、「煉獄山」を登ります。


煉獄篇

煉獄は地獄を抜けた先の地表に聳える台形の山で、永遠に罰を受けつづける救いようのない地獄の住人と異なり、煉獄においては悔悟に達した者、悔悛の余地のある死者が罪を贖う場所。亡者は煉獄山の各階梯で生前になした罪を浄めつつ上へ上へと登り、浄め終えるとやがては天国に到達するわけです。ウェルギリウスに導かれて山を登り、生前の罪を贖っている死者と語り合う。ダンテは煉獄山を登るごとに浄められ山頂でダンテは永遠の淑女ベアトリーチェと出会い、ウェルギリウスは辺獄へ帰ります。やったぜ。いよいよダンテはベアトリーチェに導かれ天国へと昇天します。


天国篇

地球の周りをめぐる太陽天や木星天などの諸遊星天(当時、太陽も遊星の一つとして考えられていた)の上には、十二宮の存する恒星天と、万物を動かす力の根源である原動天があり、さらにその上には神の坐す至高天が存在します。ここらへんはプトレマイオスの天動説宇宙論に基いてますね。天国へ入ったダンテは、各々の階梯でさまざまな聖人と出会い、高邁な神学の議論が展開され、聖人たちの神学試問を経て、天国を上へ上へと登りつめます。至高天において、ダンテは天上の純白の薔薇を見、この世を動かすものが神の愛であることを知る……。



雑な感想

気に食わねぇ奴ァ地獄行きだ!救いようのある奴は煉獄で浄化されろ!想い人は天国や!ダンテちゃん、アンタすげぇよ……もうやりたい放題だよ。だって教皇ですら地獄行きだもん。でもやっぱ地獄、煉獄、天国の構想はすごい。一人でここまで構想練れませんよ。ねりねりねりねり!全篇キリスト教的だけど特に最後は宗教的!
多くの著名な歴史上の人物が登場するので多少齧っておくとより楽しめるかもしれません。聖書引用も多いのでそっちも。また、本書は詩ですから実際に手にとって読んでもらいたいものです。長いけど……


個人的な評価!さっきも言いましたが一人で地獄、煉獄、天国をここまで構想するのは誰にでもできることじゃないです。原動力はやはり復讐心や報復心でしょうね。西洋文学らしいキリスト教的視点で描かれた叙情詩ってこともあって一日本人の僕の倫理観とは一致しない部分も多いです。ではどこがどう違って何故違うのかってのを考えると時代背景や当時の倫理も見えてくるので歴史的な意味でも楽しめたなあと。あと挿絵が怖い。特に地獄篇は責め苦がリアルガチなのでウ!となるところもちらほら。とはいえ何度も読み直してしまうのはやはり神曲の魅力に依るものなのでしょうねぇ。現場からは以上です。

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