2017年6月20日火曜日

【書評】地下室の手記【ドストエフスキー】

【地下室の手記】1864年くらい
【作者:ドストエフスキー】


ドストエフスキーの全作品を解く鍵と称される本作。内容はまさしく手記のそれ以上でもそれ以下でもない。なので実はあまり紹介する内容がないっちゅーことでかなり困っている。超噛み砕いて説明すると「非リア充の連投ツイート集」。いや……あらすじをどうぞ


あらすじ

(前半)40歳の「僕」はかつて意地の悪い小役人だったが遺産が転がり込んだのをいいことに退職、ここ20年は地下室で暮らしている。自称「意地の悪く病んだ人間」の僕は、自意識過剰で、悪人にも聖人にもなれないことを嘆く。僕は地下室に閉じこもり社会を、人間を批判する。汎ゆる計算式が敷衍され、全ての人間が合理化される時が来るとは到底思えない。結局人は気ままに恣意を欲して調和を乱すだろう。

(後半)濁り気味なぼた雪が僕に追憶させる。僕の若い頃の体験、その3つだった。

24歳で役人として働いていた僕は自意識過剰で疎まれがちだった。友人の送別会では一同を激怒させ、娼婦を意地悪く罵り…………現在のこの僕はどうにも後味が悪くなりこの「手記」を打ち切る。


……地下室の手記というタイトルだが、もっと確り言えば在る男の地下室で見つかった手記といったところか。前半部分は兎に角自分の思うままに、とは言え非理性的にある意味でまどろっこしい文章が書き連ねられている。自分を意地の悪い駄目な奴だとわかっていながらもそれを是正するわけでもなく半ば諦めがちに地下室で生きる。統合失調症とか、人格障害に顕著な例だけども、この僕と自分が重ならない人はいないのでもうほとんどの人の精神は不健康極まりないんではないか。僕だけか?いや、貴殿も……。というか日本人はだいたいこの僕とそれなりに重なるはずだ。だから読み進めてしまう。自らの綻びを解いていくように(ここちょっとかっこいい言い草、使う時はCを丸で囲んでください)

この僕のキャラクターは特に人間が目をそらしている部分を凝縮し抽出し凝固させたような人格。滅茶苦茶に自意識過剰でプライドだけは見上げるほど高く斜に構えなんでも批判する。そうして自分を守っている。誰かを認めたり褒めたりすると途端に自分の株が下がる気がするからだ。前半で自分を卑下し人々を鋭く批判する一方、後半では批判する人々に自分自身が含まれている。あなたはこの僕の愚かさを、本当に心から笑えるだろうか?本当に侮蔑し卑下することを厭わないだろうか。僕からは、以上です。

0 件のコメント:

コメントを投稿