【作者:成毛眞】
"ジョブズに憧れれば憧れるほどあなたは成功から遠ざかっている"というジョブズ信者のはらわたを規格外の超高温に温めそうな文言から本書は始まる。そしてそれはこの本のテーマでもある。
そう語るのは成毛眞氏。意識高い人は逆に知らないかもしれない。日本人だし。成毛眞氏のWikipediaページの情報が超極薄0.01mmぐらいしかなかったのでここで紹介させていただこう。
成毛眞氏は日本法人マイクロソフト代表取締役社長に就任したりした実業家で、現在でも様々な企業で社外取締役を務める。著書:「大人げない大人になれ!」などでも顕著な通り、子どものような人間こそが勝つという確信を核に抱いており、僕の知る限り彼もまたその一人です。また、著書:「日本人の9割に英語はいらない」でも思ったんですが割と物事をズバズバと切り込んで真髄をえぐり出して本質の話をするので綺麗事や耳障りのいい言葉を使わないです。本書で言えば、ジョブズ信者の意識高い系ヒップスターを恐るべき即死攻撃の数々で昇天させるような物言いが多いです。耳障りのいい当たり障りのないコメントよりいいですけどね。
さて、そんな成毛眞氏曰く、"日本からジョブズは生まれないし生まれる必要もない"そうである。ジョブズを造物主が如く崇める、スタバでMacを颯爽と弄る意識高い系がこれを聞いたら反論をプレゼンしてくるかも!………ふざけすぎました。2011年10月5日にジョブズが天に召されてから数ヶ月は日本はなんというかジョブズ・ブームの最中だったように記憶しています。あの時の書店、ないし古本屋に並ぶ夥しい量のジョブズ本の数々と言ったら筆舌に尽くしがたい地獄だった。だがそれは逆に言えば日本人がジョブズのような人物像を求め困窮していたんだろう。あるいはそれに準ずるリーダーを。
偶像としてのスティーブ・ジョブズ
まず、映画や伝記で描かれたジョブズはジョブズではない。偶像でありアイドルである。同じ意味である………。なんというか、まぁ、なんかそうなのである。
ステレオタイプな彼のイメージはおそらくこうだろう。奇人、天才、偉人。そしてイノベーター。イノベーションが口癖の無能も割とこういうジョブズに心酔しきっていることが多い。あ、いや、あくまで多いだけだ。
んで、こんな何者かが作り上げたジョブズ像を愛しイノベーターになりたいと宣う哀れな子羊を量産したメディアはいつものことだが大いに反省し猛省していただきたい。本書ではマイクロソフトに勤務していた成毛眞氏が彼とアップルのリアルを嫌というほど教えてくれるぞ!
真の天才
実際のジョブズは偉人的でも天才的でもない。真の天才は0から1を見出す。成毛眞氏の言う天才はそんな天才、アインシュタインである。相対性理論や光量子説を提唱した紛うことなき天才である。むつかしい話だけど、相対性理論は今GPSで活かされている。地上と衛生上では時間の進む早さが違うので補正が必要なのだ。もしこの発見がなければGPSの発明すら数百年遅れたかもしれない。だが、はっきり言ってジョブズは0から1を見出したわけではない。価値を見出し市場に顧客を創造したことは言うまでもない。素晴らしい偉業だ。だが目眩を起こすほどの衝撃はなかったように思う。
本当のジョブズ
全部説明すると本の読み聞かせになってしまうのでかいつまんで話すと、はっきり言ってジョブズの打ち出した商品はすべて既存技術の寄せ集めだ。ただ、そんな在るモノを民間向けにしてみたり、なんかデザイン的に良くしてみたりした。そしてそれを美しく表現し陶酔するような言い回しで魅了する。ジョブズの真に評価するべき点はこういうところだ。彼は超有能なビジネスパーソンであったということ。あと、同僚からめちゃ嫌われたこと…………彼の悲痛な人生はiPhoneの成功がなければ全く割に合わない、苦難をミルフィーユかってぐらい重ねた人生だ。冷静になれ、どこに憧れるんだよ。
イノベーションを起こすために
話を本筋に戻そう。ジョブズに憧れてはいけない理由は日本人が持つ特性、性質に関わる。まず、ちょっと日本人がどんな性質を持つ民族か想像してみてほしい。次に、ジョブズがどんな人間かを思い出して欲しい。両者はかけ離れてるどころの騒ぎではない。水と油どころではない、もはや水分同士ですらない。あと、さっき言ったとおり別にジョブズはクリエイティブじゃない。仕事ができる変人である。そういう意味で日本人はイノベーターとしてのジョブズに憧れてはいけないし憧れたとしたらそれは大いなる見当違いだし憧れるくらいならさっさと目の前の仕事に取り掛かるべきである。Linux生みの親ことリーナス・トーバルズも言ってたもん!
………ではクリエイティブになるために、イノベーションを起こすためにはどうすればいいか。成毛眞氏の思う実践法がいくつかある。説明するとかなり文章が多くなるのでアフォリズム的に述べると、「変化」「子ども」「計画的偶発性」である。これらはある偶像へのアンチテーゼにもなりえる。それは何か?決まっている、安定を望む大人だ。言われた仕事をただ粛々をこなし媚び諂い定年まで養ってもらおうとする者だ!しっかりしろ、定年退職が機能したのはそもそも戦後数年だけだぞ!
イノベーションについてだが、アインシュタインはもう生まれないと思うので多くのことを見、聞き、嗅ぎ、知り、行うことだろう。昭和生まれの硬い硬い頭からはなんにも生まれないんである。これは偏見だな!すいません…
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ジョブズの死から5年と少しが経った。今本書を読めばあのジョブズ・ブームとジョブズ自身を見つめ返すことができる。そしてジョブズに心底心酔する奴を全力で見下すことができる。何故ならあなたは本当のジョブズとその偉大さを知るからだ。真の創造性をテーマに懐き日々を生きれば見えなかったものがきっと見えてくるはずです。意外と綺麗に収まったぞ!是非本書をどうぞ。
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